169人が本棚に入れています
本棚に追加
/506ページ
安否確認が遅延している。見にいった巡察使がことごとく帰ってこない。
巡察使局はその状況確認だけで大混乱だ。
だから上は、渋しぶジョーカーを切る気になったんだろう」
「ここに、あの〝天才〟がいるから、かな」
「ふっ。ここに〝上が消したい悪党〟がいるから、とも言えるがな」
アルトが、けほっと小さな咳をした。
ゴトーは急に我に返った様子で慌ててタバコを灰皿にもみ消し、
立ちあがって窓を開けた。
「アルトさんでしたね。ご用件を伺いますよ。ああ、もちろん。
ご要望の確約はできかねますがね。ウチは今、立て込んどりましてね」
アルトは一度、となりの剣士を見上げ、それから切り出した。
「実は、弟の力を借りたいのです」
最初のコメントを投稿しよう!