第3章 巡察使第881隊パインズ分署

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 安否確認が遅延している。見にいった巡察使がことごとく帰ってこない。  巡察使局はその状況確認だけで大混乱だ。  だから上は、渋しぶジョーカーを切る気になったんだろう」 「ここに、あの〝天才〟がいるから、かな」 「ふっ。ここに〝上が消したい悪党〟がいるから、とも言えるがな」  アルトが、けほっと小さな(せき)をした。  ゴトーは急に我に返った様子で慌ててタバコを灰皿にもみ消し、 立ちあがって窓を開けた。 「アルトさんでしたね。ご用件を伺いますよ。ああ、もちろん。  ご要望の確約はできかねますがね。ウチは今、立て込んどりましてね」  アルトは一度、となりの剣士を見上げ、それから切り出した。 「実は、弟の力を借りたいのです」
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