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鳩の恩返し
ゴミ捨て場で唖然として俺は、そいつを見ていた。ゴミ袋を提げた俺は、ごみ収集所の網の回りの黒いやつらを追い払った。カアカアと不満げにやつらが飛び立ったあとに、網の中で見つけた。そいつは、バタバタと羽をバタつかせてもがき、あたり一面に羽毛を撒き散らしていた。
「鳩ぉ?」
思わず俺は声に出していた。
どうやってその中に入ってしまったのか、経緯は知らない。
「お前、どんくさいな。」
やれやれと思いつつ、俺は手で網をめくってやると、自由を得たそいつは、ぱたぱたと飛び立って行った。そして、俺はゴミを放り投げると、鳥に荒されぬように、もう一度網をゴミに被せて仕事に出掛けた。
その日の夜、俺の部屋を訪ねる者が居た。友人はおらず、ましてや、遠く離れた故郷の年老いた親が訪ねてくるとは思えなかった。
なんだよ、こんな時間に。新聞屋かあ?
ドアスコープを覗くと、そこには女が立っていた。
セールスではないようだ。バッグは持っていない。この時間の宗教はあり得ない。
「どちら様でしょうか?」
俺がドアの向こうからたずねると、女は下を向いてうなだれている。
「すみません。」
小さな声でそう言った。顔色が悪いようだ。
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