鳩の恩返し

3/8
前へ
/8ページ
次へ
マジか。見知らぬ女を泊めてしまった。まさか、そういう強盗じゃないだろうな? 俺はその夜、一睡も出来なかった。 結局、女は強盗などではなかった。 俺は一睡もしなかったので、つい朝方うとうとしてしまい、いい匂いに起こされた。 「夕べはありがとうございます。お礼に、朝ごはん作りました。」 テーブルの上には、久しぶりのまともな朝飯が並んでいた。 はっきり言って異常事態だ。夕べいきなり訪れた見知らぬ女を泊め、その女は朝飯を作っているのだ。 何かある。俺は、警戒心マックスだった。 それを察してか、彼女の方が先に 「いただきます。」と言い、朝飯を食べ始めた。 「何も盛ったりしてませんよ?」 俺の心を読んでか、そう言うと、俺のおかずをつまみ食いして見せて、にっこりと笑った。 「いただきます。」 腹が減った俺は、貪るように食べた。懐かしい。こんなまともな朝飯は実家以来だ。 その日から、俺と見知らぬ女の同居生活が始まった。 その女は、住居を追われ、彷徨っていたのだ。女性ホームレス。 何でも、派遣先を切られ、アパートも追い出されて途方にくれていたところに、あまりの空腹に貧血を起こした。 「しばらく、うちに居る?」 俺は下心満載だった。あわよくば、このままこの娘と。 彼女は鳩子と言った。鳩子?古めかしい名前だ。     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加