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ゆかちゃん
大人しくて優しいけれど、意地悪されていたゆかちゃんが死んだのは、一月前の事だ。
あの日、朝礼の時、先生がひとりひとり名前を呼んで出席を確認していたけれど、ゆかちゃんだけ返事がなかった。おかしいな、休むという連絡もないけれど、と、先生が首をかしげた。みこちゃんたちが意地悪い顔で噂していた。
「やあねえ遅刻よ」
「ううん、宿題忘れて学校来るの嫌なんじゃなーい」
ゆかちゃんは確かにだらしのないところがあって、宿題をいつまでも提出しなかったり、テストの点が悪くて何回も再テストさせられたりしていた。
忘れ物も多いし、持ち物も綺麗じゃない。内履きはいつ洗ったのか分からない。ハンカチは持って来ていない。そういうところが、いじめられる原因だった。
でもゆかちゃんは優しい子で、自分をからかったり意地悪したりする人でも教科書を忘れたら、いつでも快く見せてあげていた。
わたしはゆかちゃんと仲が良かった。毎朝一緒に登校していたけれど、その日に限り、ゆかちゃんが寝坊したというので、先に学校に行った。
「相川さん、木下さんと一緒じゃなかったの」
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