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「ええ!?」
びっくりした僕を差し置いてアレンは話を続ける。
「僕はこの間飛び降りて死のうとしましたが、軌道を変えられてしまい、ゆっくり落下したのですごく怖かったんです。なので、もうあの方法で死のうとは思えません。上手い死に方がわからず悩んでいましたが、キルルさんの即死魔法を見て感動しました。あれなら一瞬で死ねるから怖くない。僕は即死魔法で死にたいです」
「な……」
僕は、アレンと接点を持ったことを後悔した。やっぱり、即死魔道士の僕が死にたい人間と関わってはいけなかったのだ。
「アレン、魔法の素質がないのは気の毒だけど、だからといって死ななくてもいいじゃないか」
「ぶっちぎりに魔法の素質があるキルルさんになにがわかるんですか? 僕はなんの力もない自分に心底嫌気がさしているんです」
「アレン……だめだよ。やっぱり、君は殺せないよ。その理由では殺せない」
「どうしてです?」
「僕は、精霊が見えなくて、適性検査を受ける前から魔法の才能がないって決めつけられて、いじめられてたんだ。結果的には、一般魔法の素質はなかったけど即死魔法の素質があって魔道士になれた。だけど今も魔法の素質がない人が他人事に思えないんだ」
自分は魔法の素質がないだろうと思いながら過ごした期間があったから、僕は今も時々魔道士として過ごしているのが信じられなくなることがある。今のすべてが夢のようと言うか、魔法の素質がない感覚に逆戻りするときが今もあるのだ。
スーと、アレンは、「もうひとつの僕」なのだ。そんなアレンを殺せるわけがなかった。
「なにより、今の僕のレベルじゃまだ人を殺せないんだ。だから、今すぐ君の希望には答えられないよ。ごめん」
「……わかりました」
アレンはそれ以上は食い下がることなく、去っていった。
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