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後日、スーの部屋に行ってこの話をすると、
「やっぱり、そうなったか……」
スーは、こうなることをある程度想定していたようで、さほど驚いていなかった。
「ああ、僕には、アレンを殺せないよ。どうにか、死ぬことは諦めてもらえないかな?」
スーは渋い表情で少し考えたあと、思わぬことを言った。
「……ねえ、そのアレンの依頼、いっそ引き受けたらどうかな?」
「どういうこと!?」
「僕さ、キルルが、僕をいじめていた奴らを殺してくれるって言ってくれたから、今があるというか、いじめのことをとりあえず忘れて明るく過ごせたと思うんだ。あいつらがまだ死んでなくても、そのうち死ぬんだと思ったら気が晴れたんだよ。ということはさ、アレンも、もう少ししたら楽に死ねる、と思えたらしばらくの間明るく過ごせて、そうして明るく過ごしているうちに、死ぬ気がなくなるかもしれないよ」
「……なるほど」
たしかに、この間僕の前に現れたアレンは、少し晴れやかな表情をしていた。もしかしたら、死ぬことはアレンにとって生きる希望になるかもしれない。死ぬことが生きる希望ってなんか変だけど。僕が即死魔法で殺人するにはあと一年ぐらいかかるから、引き受ければあと一年はアレンの自殺を引き止められるだろう。
「だけど、僕がレベル80になったとき、アレンがまだ死にたいって気持ちだったらどうしよう?」
「そのときはそのときで、何か理由をつけて断ればいいよ。ものすごい額の殺人依頼料ふっかけるとか」
「はは、いいね、そうしよう」
後日、スーの部屋にアレンを呼んで、依頼を引き受けるという話をアレンにすることにした。
「一応、依頼は引き受けることにするけど、実行するのは早くて一年後だよ。それと、いつでも撤回してくれていいからね」
僕がそう言うと、
「はい、わかりました。ありがとうございます」
アレンは、今まで見たなかで一番晴れやかな顔をして答えた。
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