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道から少しそれたところに、小さな小屋があった。看板から見て宿のようだ。
「皆さん、目的地はあの宿です」
と校長先生は言った。
「宿泊地が宿じゃなくて、目的地が宿……?」
ポールトーマスを始め、皆が怪訝に思った。今日は泊りがけの遠足ではないはずだけど……。
宿についた。その宿は、かなりボロい建物で、人が住んでいるとはとても思えないところだった。窓は割れていたし、建物は蔦で覆われている。
「ドアが開きませんね」
ドアも蔦に覆われ、開きそうにない。
「先生、ここ中に人いるんですか?」
トイが聞くと、校長先生は、
「いますよ」
と答えたが、このドアから宿主はどうやって出入りしているのだろうか。
「蔦、枯らしましょうか」
僕が聞くと、校長先生ではなく生徒同士で決めろと言われたので、ポールトーマスが指示した。
「キルル、頼むよ。あまり魔力使いすぎないでね」
「わかった」
僕は即死魔法を狭い範囲で発動した。ドアの周りの蔦が枯れて茶色く変色する。みんなで枯れた蔦をどかして、ようやくドアが開いた。
ドアを開くと、中は真っ暗で何もない空間だった。明らかに普通の宿じゃない。みんな身構えて警戒した。
「おおー! みんな、よく来なすった!」
暗闇から突然おじいさんが現れた。真っ白なあごひげを地面まで伸ばした、二百歳ぐらいに見えるおじいさんだった。枯れ木なのかロッドなのかよくわからない枝を手に持っている。
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