第1話-2:レベル1 最初の魔法

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 講義は明日からで、今日はこの後は自由に過ごしてよいとのことだった。まだ昼だったので、特殊クラスの皆で食堂に昼食に向かう。簡略魔道士リャと笑わせ魔道士ショウが蘇生魔道士リリイを食堂に誘うと、付いてきた。リリイは、今日までは寮の自室に籠もっていたものの、さすがに今日の入学式やホームルームにはきちんと出席していたし、食堂にも付いてきた。初めてここに連れてこられた日よりは元気そうに見えた。  食堂につくと、いつものように特殊クラスで固まって食事をした。僕はリリイに話しかけたかったが、食堂で食事している間は女子が話しかけていたのでリリイと直接話すことはできなかった。リリイは口数は少ないものの、質問にはちゃんと返している。女子たちの会話を聞く限り、やはりリリイは相当なホームシックにかかっているようだ。魔法に興味はあったから講義は楽しみなものの、田舎の村に帰りたくてたまらないらしい。  僕は故郷の田舎町になんの未練もなかったし、王都の生活が楽しくてしょうがなかったが、リリイは完全にその逆のようだ。リリイの故郷は、よほどいい村だったのだろうか。  女子たちはこの後王都の街で遊ばないかと誘ったが、リリイは王都の街に興味がないようで、自室で魔導書を読みたいからと言って断った。リリイは少しの量しか食事せず、皆より早く食事を終えると自室に帰ってしまった。 「うーん、リリ、大丈夫かなあ」 リリイの名前を勝手にリリと略したリャが、心配そうに言った。 「大丈夫! 私が笑わせ魔法を早く覚えて笑わせてあげるわ」 と、ショウが言い出した。ショウは、見た目は可愛らしいものの、面白いものが大好きで、一人でひっそりダジャレを考えてロビーで披露し、皆を凍りつかせたりしている。早く笑わせ魔法を覚えてこいと皆からブーイングを受けてもちっともひるまない。笑わせ魔道士という肩書きといい、うちのクラスで一番変わり者はショウのような気がする。  いや、うちのクラスは皆結構変わり者かもしれない。まともなのって、今日のホームルームの冒頭で学級委員をやることが決まった複合魔道士ポールトーマスぐらいじゃなかろうか。彼はしっかりしている。  僕もリリイと話したい気持ち、というか仲良くしたい気持ちは大いにあるのだが、あの様子だとどこから取り入ったらいいのかわからない。
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