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植物図鑑も買って読むようになった。今までは花になんか興味なかったのに不思議だ。
僕は植物図鑑から、気にいった野草を探し、空き地に咲いているのを見つけると次々枯らせて部屋に持ち帰った。それを逆さにして壁に吊るしたり、瓶に詰めたりして飾った。殺風景だった僕の部屋が、徐々に居心地が良くなっていくのを感じた。この話をスーにしたところ、
「フラワーホールに挿したらどう?」
と言われた。僕がこないだスーに買ってもらったベストの襟には、花を挿すフラワーホールという穴があるのを今頃知った。
フラワーホールに枯れた花を挿す。鏡で見ると、これはこれで洒落ている。
だけど、これは、僕の心の内をあまりにも垂れ流している気がして、この状態で外を歩くのは抵抗を感じた。だから、僕はあえて、枯れてない花をフラワーホールに挿すようになった。僕なりに、自分の内を取り繕いだしたのだ。
僕のフラワーホールの花に一番最初に気がついたのは、リリイだった。
「あら、綺麗なお花。キルルはお花が好きなの?」
「あ、ああ」
僕の言葉を聞くと、リリイはにっこり笑った。
枯らすのが楽しいから好きだとは、とてもリリイに言えない。花が好きなことには変わりないからそれでいいと思った。
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