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第6話:レベル6 殺しの扉
「キルル、待ってたよ。これでいいかい?」
僕がスーの部屋を尋ねるなり、スーは籠を差し出した。籠の中には小さなネズミが三匹いた。皆籠の中狭しと元気に走り回っている。
「いいね。ありがとう」
僕は今日、レベル6になった。入学して二ヶ月経っていた。レベル5までは草木を枯らすことしかできなかったが、とうとう手のひらに乗るぐらいの小動物なら殺せるようになったのである。レベル5になったときから、レベル6に備えて、殺しても良さそうな小動物をスーに用意してもらっていたのだ。
僕はネズミを一匹、しっぽをつまんで取り出した。ネズミはじたばたしている。振り切って逃げられないよう、僕は指先に力を入れた。
「よし、スー、早速試すよ。いいかい」
「うん」
僕は、早速呪文を唱えた。草木を枯らせる呪文とは、また別の呪文だ。
呪文が終わると、ネズミは衝撃を受けたように一瞬びっくりした表情を見せたあと、パタリと動かなくなった。僕にしっぽをつままれたまま静かにぶら下がっている。
「お、おおー!」
息を呑んで見守っていたスーが歓声をあげた。
僕は、死んだネズミを左手に乗せた。死んだネズミはただ眠っているように見えた。だんだん冷たく、硬くなり、死骸らしくなったが、それはかわいらしい置物のようでもあった。
「かわいい。持って帰りたいな」
僕は反射的にそう言っていた。
「ええ?」
珍しく、僕の発言にスーが驚いている。僕がスーの顔を見ると、スーは少し怪訝そうなかおで僕を見ていた。しばらく僕とスーは沈黙し、少し妙な空気になった。
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