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(そうだよ。意見は概ね一致してるんだ。ガンガン行こうぜ)
ポールがそそのかす。
(と、いっても、何をどうするんだ)
(ネルの本名聞こうよ)
(なるほど)
僕とポールは具体的に話さなくても通じることもある。さっきのように喧嘩になることもあるが……
「ネル、ネルって本名じゃないだろ。その、本名は何?」
「ロザリア」
ネルは、本名をあっさり教えてくれた。レベル100の魔法は相手の顔と本名がわかるだけでかけられたりするから、魔道士は身を護るために本名を名乗らないそうだ。なので魔道士は基本偽名だと。本名を教えてくれるということは、信頼してくれていると思っていいだろう。
「ポールトーマスは? ほんとはなんて名前?」
僕は、ある意味ポールトーマスが本名だ。しかし、一応本来の名前を答える。
「トーマス」
「ふーん? だったら、『ポール』はどこから?」
「……死んだ、双子の弟」
ぼーっとしていたネル、いや、ロザリアは、目を見開いて僕を見た。改めて見ると、とてもかわいい顔をしている。
「え? ……いつ、亡くなったの?」
「一年ぐらい前。適性検査を受けるの楽しみにしてたな。得意な魔法が見つかったら、それを極めて大魔法使いになるんだって言ってた。なのに事故であっけなく」
「だから……トーマスはいろいろ頑張ってるんだ」
「うん、弟の分まで、僕はいろいろな魔法を覚えたいんだ」
「そう……」
「ロザリアか、かわいい名前だね。二人でいるときは、ロザリアって呼んでいい?」
「うん、私もトーマスって呼ぶ!」
「いや、僕のことはポールトーマスでお願い」
「えー、なんで?」
「ロザリア、うっかりみんなの前で本名呼びそうだし」
「えー。そんなこと……うん、ありそう……ポールトーマスにしとく」
すまん、ロザリア、ほんとはそんな理由じゃない。ポールがお前だけ名前呼ばれるなんてずるいって、ポールが引き下がらなかったんだ。だからポールトーマスでお願い。
あと、ポールについては、ロザリアの気を引くため大幅に変更して伝えてしまった。すべてポールの思いつきのでまかせだ。ポールが死んだ弟なのは事実だから、すべてが嘘ではないけど。
でも、おかげでロザリアに触れられたよ。ありがとう、ポール。
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