第11話-2 ポールトーマス

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(そうだよ。意見は概ね一致してるんだ。ガンガン行こうぜ)   ポールがそそのかす。 (と、いっても、何をどうするんだ) (ネルの本名聞こうよ) (なるほど)  僕とポールは具体的に話さなくても通じることもある。さっきのように喧嘩になることもあるが…… 「ネル、ネルって本名じゃないだろ。その、本名は何?」 「ロザリア」  ネルは、本名をあっさり教えてくれた。レベル100の魔法は相手の顔と本名がわかるだけでかけられたりするから、魔道士は身を護るために本名を名乗らないそうだ。なので魔道士は基本偽名だと。本名を教えてくれるということは、信頼してくれていると思っていいだろう。 「ポールトーマスは? ほんとはなんて名前?」  僕は、ある意味ポールトーマスが本名だ。しかし、一応本来の名前を答える。 「トーマス」 「ふーん? だったら、『ポール』はどこから?」 「……死んだ、双子の弟」   ぼーっとしていたネル、いや、ロザリアは、目を見開いて僕を見た。改めて見ると、とてもかわいい顔をしている。 「え? ……いつ、亡くなったの?」 「一年ぐらい前。適性検査を受けるの楽しみにしてたな。得意な魔法が見つかったら、それを極めて大魔法使いになるんだって言ってた。なのに事故であっけなく」 「だから……トーマスはいろいろ頑張ってるんだ」 「うん、弟の分まで、僕はいろいろな魔法を覚えたいんだ」  「そう……」 「ロザリアか、かわいい名前だね。二人でいるときは、ロザリアって呼んでいい?」 「うん、私もトーマスって呼ぶ!」 「いや、僕のことはポールトーマスでお願い」 「えー、なんで?」 「ロザリア、うっかりみんなの前で本名呼びそうだし」 「えー。そんなこと……うん、ありそう……ポールトーマスにしとく」  すまん、ロザリア、ほんとはそんな理由じゃない。ポールがお前だけ名前呼ばれるなんてずるいって、ポールが引き下がらなかったんだ。だからポールトーマスでお願い。  あと、ポールについては、ロザリアの気を引くため大幅に変更して伝えてしまった。すべてポールの思いつきのでまかせだ。ポールが死んだ弟なのは事実だから、すべてが嘘ではないけど。  でも、おかげでロザリアに触れられたよ。ありがとう、ポール。
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