第9話 スーとの出会い

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第9話 スーとの出会い

 養成学校の寮に入ってから約二週間たった。両親は先週故郷の町に帰って行った。寮に入って気がついたことなのだが、僕は朝弱く夜更かし好きらしい。実家にいた頃は母さんが起こしてくれているからわからなかった。養成学校の中でも特殊クラスは個性尊重を理念にしているため、寮の規則も緩く、特に起床時間や消灯時間が決まっていない。夜に街を徘徊してもいいらしい。  僕は最近夜の王都を一人で徘徊するのに凝っていた。故郷の町は田舎だったから、夜はただ真っ暗で出歩いてもしかたなかったが、王都は夜になっても街灯も建物の明かりも多くついており、賑やかだった。夜の街は昼の街以上に新鮮で、僕はすっかり夜の王都が気にいってしまった。  今の僕は国立魔道士養成学校の腕章をつけている。僕はまだ魔法を習得する前だが、そんなのは、見た側にはわからない。この腕章を見た者は明らかに警戒してくる。おかげで夜の王都を一人で徘徊できていた。  こうやって、王都の街を歩く度、もし、あの適性検査の日、僕になんの才能も見つからなかったらどうなっていたのかと考えていた。考えてもわからなかったし、あまり考えると暗い気持ちになるから途中でやめてしまうのだけれど。
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