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第10話 南の特殊魔道士
南の地方の式典と適性検査では、一人特殊魔道士が見つかったそうだ。僕たちは校長先生がその子を連れてくるのをロビーで待っていた。だが、なにか揉めているようで、その少女と校長先生が言い合いしている声がロビーの外の廊下から聞こえてくる。僕たちは気になってロビーの外に出た。
「私、こんなところで三年も暮らせません! お願いします! 故郷の村に帰してください!」
少女が、校長先生に訴えていた。少女は後ろ姿で、顔は見えない。
「なりません。あなたは特殊魔道士なのでここへの入学は強制です」
校長先生は譲らなかった。
「どうしてです!? 私は故郷の村の学校で少し魔法を習えればそれで充分です!」
「そう言われましてもね、あなた、一般魔法も、火水土風草すべてレベル100の素質があるんですよ。あなたの故郷の村の魔法学校では面倒見きれませんよ。うちしかふさわしい学校がありません」
「そんな……」
「そしてあなた、ヒーラー志望でしょう。あなたは『蘇生魔道士』なんですよ。死んだ人を生き返すことができるんですよ。ここで『蘇生魔法』を会得すれば最強のヒーラーになれます。田舎出身で王都に馴染めないのはわかりますが、長い目でみればうちで勉強するのがあなたのためですよ」
「う、うう……」
少女はまだ受け入れきれてなさそうだったが、抵抗することもできなさそうだった。校長先生がその子の手を引っ張りかなり強引にロビーに連れてきた。僕たちもロビーに引っ込む。
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