15人が本棚に入れています
本棚に追加
村森学園の学生食堂は広く、メニューも多彩なので拓郎は気に入った。
できるだけ目立たぬよう、隅っこの席で素うどんを食べようとし
ていた。トラブルを起こした真美は教室から消えていた。
(家に帰ってくれたならそれはそれでいいだろう。今日は疲れた……)
「探したわよ。まだ話終わってないから。逃げちゃダメだよ本気で」
早口の甲高い声を聞いて拓郎は席を立とうとしたが、できなかった。
目の前に学級委員長の杉田が座り、おもむろに弁当を広げた。
食べる? 私が作ったんだけど、特別に食べてもいいよ拓郎君」
言うや否や、サンドイッチが拓郎の口元に差し出された。
戸惑った拓郎は、あらためて杉田の顔つきを観察した。
くせ毛のショートボブが良く似合い、愛嬌のある顔だ。瞳が大きい。
「あのさあ。彼女いないなら私がなってあげてもいいよ半分本気で」
ぐっと顔を近づけられた拓郎は反射的にのけぞってしまった。
「え~と、あのその、僕は忙しいから無理かな。興味もないし……」
「……っえ? よく聞こえなかった。私が5秒で振られるとかないし」
サンドイッチが学食の床にぽとりと落ち、誰かがそれを踏んづけた。
最初のコメントを投稿しよう!