記憶へ

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寝室の大部屋で十数人の子供たちが雑魚寝している。 「加速」を使いすぎた真美は死んだように眠っている。 拓郎が抱き寄せ、懸命に温めると瞳が開いた。 「……拓郎。彩ちゃんが死んじゃった。私が殺したんだ」 はらはらと涙をこぼし、震える真美を拓郎は強く抱きしめた。 「真美は悪くない。気にしないで。傷は痛くない?」 「……拓郎、私もうここを出たい。訓練はもう嫌だ」 「誰かに聞こえたら大変だよ真美。もう少し眠ろう」 「ぎゅっとして拓郎。そうすれば眠れる……」 鉄格子の窓から見える月が明るかった夜、真美が消えていた。 「……拓郎。これを見て、これを使ってここから逃げよう」 起きた拓郎の眼前に鈍く光るナイフが差し出された。 「やめよう真美。逃げようとすれば教官に殺されるよ」 「教官ならもう殺したよ。このナイフで首を切ったら死んだ」 ナイフからは血が滴り落ち、真美は薄笑いを浮かべていた。
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