記憶へ

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どこをどう逃げたのか、正確には思い出せない。 森の中、藪の中、川を渡り、転んでずぶ濡れになった。 真美が蜂に刺されて泣いていた。泣き止むまで抱きしめた。 真美と拓郎は風邪を引き、洞穴で一晩過ごした。 朝になると洞穴に誰かがやって来た。保護された真美は震えていた。 「美味しい」 温かいスープを一口飲んでようやく真美の震えが止まった。 テントの中のようなところで眠り続けた真美が起きた。 「ここはどこ? 拓郎は?」 「ここにいるよ真美。僕たちは助かったみたいだよ」 しばらくは知らない家で過ごした。でも訓練はなかった。 「そろそろ思い出したかな? 君たちはどこで何してたの?」 優しそうな顔のおじさんが何度も同じ質問をした。 「山でお父さんお母さんと遊んでいたのかな? ナイフは預かったよ」 その一言で真美が金切り声を上げた。 失神した真美はどこかへ連れて行かれた。
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