記憶へ

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問題児となった拓郎と真美は小学校に通えなくなった。 上月という家庭で養育されていた二人はある施設に預けられた。 そこは諸事情で学校に通えなくなった子供たちが集う場所だった。 拓郎はそこで友達を作り、遊び、会話して日々を過ごしていた。 だが真美は一日中黙り、遊ぼうともしなかった。 周囲の子供たちは真美を気味悪く思い、近づこうとしなかった。 ある日、男性職員の一人がトイレで倒れていたので騒ぎになった。 「ねえ真美、何か知ってる?」 拓郎の問いに真美は頷いた。 「あいつは汚い手で私に触ろうとした。だから弱点を潰した」 「膝蹴り一発で潰れた。気持ち悪かったけど、それで終わった」 「真美。たぶん僕たちはここも追い出されるね」 「別にいいよ。拓郎と一緒ならどこでもいい」 拓郎に抱きついた真美は嬉しそうに笑った。
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