目覚めのとき

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「……僕たちの今の「設定」はそんなところだよ真美」 「このアパートの大家さんが私たちの「父」なのね。覚えたわ」 真美は機嫌の悪そうな顔で頷いた。 「そして苗字が「上月」なのね、そっちは忘れそう。一応覚えとく」 「それより何より私が「お姉さん」というのが気に入ったわ」 真美の表情が嬉しそうに輝く。 「そう、気に入ってもらえて何よりだよ真美」 「「姉さん」でしょ? 拓郎。アナタは弟のくせに生意気よ」 何が気に入ったのか、真美は少々はしゃいでいる。 「じゃあ姉さん。あらためて大家さんに挨拶しよう」 「僕らの保護者だからね。彼の心証を良くしないとアパートから追い出されちゃうよ」 「僕らは異母姉弟で身寄りがないから彼の保護だけが頼りなんだよ」 「間違っても彼に嫌われてはいけないよ姉さん」 姉さんという呼称がよほど気に入ったのか、真美は拓郎の言葉に素直に頷いた。それでも表情が険しいのは彼女の生き様を考慮すれば仕方のないことだと拓郎は理解した。 (頼むからトラブルを起こさないでほしいな。祈るしかない) だが残念ながら拓郎の願いは天に届かなかった。
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