目覚めのとき

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「やっと妹さんが起きたというのか。難しい病気は大変だね」 大家の藤原は初老の男でアパートの近所で一人暮らしをしている。 「違います。姉です。拓郎は間違えたんです。私は姉ですから」 真美が顔を真っ赤にして怒っている。 「おや、そうかい。拓郎君の話では確か……。まあいい、お姉さんだね」 「すみません、僕たちは幼いころに両親を亡くして大変だったので……」 「その辺はわかってるよ。真美さんだったね。可愛いお嬢さんなのに」 その一言で真美の顔が一気に紅潮した。 (いかんな、これは怒ってるぞ) 「「気持ち悪い! 気安く可愛いとか言うなエロジジイ!」 「……ごめんごめん。悪気はなかったんだけどねえ」 藤原の手が真美の肩に伸びたその瞬間。 彼の体は藤原宅の玄関にうつぶせになり、腕はねじり上げられていた。 (止める間もなかった……) どうしていいかわからず、拓郎は真美を連れて自分たちの部屋へ戻った。
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