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拓郎と真美は村森学園高等部1年9組に転入することになった。
陰気な中年教師の横に並び、拓郎と真美はクラスメイトとなる大勢の生徒
を眺めた。みな一様に黙って転入生二人に注目している。
(不審に思っているのか、単に興味津々なのか、両方だろうな)
(1年生で転入。しかも男女同時に同じクラスだ。適当にごまかそう)
「上月拓郎君と上月真美さんだ。転入生だが仲良くやってくれ」
教師が黒板に拓郎と真美の名前を書くと、やはり教室がざわついた。
「上月拓郎です。早くクラスに馴染みたいので仲良くしてください!」
「……」
威勢よく挨拶した拓郎の隣で真美は仏頂面で沈黙している。
(おう、めちゃ可愛いじゃん)
(緊張してんのかな? あいつら兄妹なの? 双子か?)
男子がヒソヒソ声で沈黙する真美の寸評を始める。
(……。……。……。……。)
女子はみな拓郎を食い入るように見つめ、小声で品定めしている。
「ハイ! 質問!」
高々と手を上げたのは一人の女子だった。
「二人は兄妹ですか? それはいいとして拓郎君、彼女いますか?」
一斉にクラスの女子が騒ぎ始めた。
(……いきなりそう来たか。ズバッと答えれば無関心になるだろう)
「拓郎は弟です! 私は姉です! くだらないこと聞くなブス!」
沈黙を破り、真美が放った大声で教室が静まり返った。
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