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(ある程度予想してたけど、このピンチどうするか……)
拓郎の頭脳は静寂に包まれた教室内でフル回転し続けた。
その間も真美と真美に暴言を浴びせられた女子は火花が出るほど睨み合っている。
どちらも一言も発せず、担任教師は窓の外を見ている。
「まず、僕らは本当の姉弟ではありません。僕も姉も孤児なんです」
意を決した拓郎が一言言い放つと、教室にざわめきが少し戻った。
「上月というのは養父の名字です。だから本当の名字ではありません」
拓郎の言葉をかみ締めるように聞いている女子たちは沈黙した。
男子たちは睨み合う真美と一人の女子に注目してヒソヒソ話している。
「それから、僕には彼女はいません。過去に女子と交際したこともありません。以上です。先ほどの姉の暴言を心からお詫びいたします」
そう言って拓郎は深々と頭を下げた。
(……。……。…………。)
「……じゃあ、まあそういうわけでみんな、仲良くしてあげてくれ」
担任教師は力なく拍手した。生徒たちは誰も拍手しなかった。男子たちは特に関心がない風だったが、女子たちの反応はさまざまで、強い視線で拓郎を見つめたり、すすり泣いている者もいた。
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