千之家様さすけね

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村の子供じゃなかった。 冬だというのに半そで半ズボンで、変な髪型だった。短いおかっぱで、横とうしろを刈り上げていた。 ミナミと同い年ぐらいだろうか。 私は男の子を2階の部屋から眺めていた。 まさか子供が現れるとは思っていなかった。 男の子はぼんやりとバス停のほうから神社に向かって歩いていた。たまにまわりを見回して、不思議そうな顔をした。 迷子? そんなわけない。 あんなに小さな子が迷ってくる場所じゃない。 どこかの家の親戚の子かな。 そうだとしてもなぜ半そで半ズボン? 風邪を引いちゃうよ。 1階にいるママに知らせよう。 そう思ったときだ。 玄関からミナミが飛び出してきた。 勢いよく走り出してから立ち止まり、私を見上げた。 目が合うとミナミは悪戯っぽく笑った。 唇の右はしに舌をぴょこっと出した。 私はすぐ先にいる知らない男の子を見た。 変な髪型、半そで半ズボンは古びた絵本のなかの子供みたいに色あせていた。 どこかで切り取られて、そこにぽんと落とされたみたいだ。 ずっと昔に切り取られたみたいな男の子だ。 千之家様さすけねと言わないと、あんべよくねえことが起こる。 ミナミを見下ろす。 悪戯っぽく笑っている。 ダメだ! 窓ガラスを開けて身を乗り出す。 寒風が吹きつけて来た。 ミナミがなぜか手を振って男の子に駆け寄った。 あんべよくねえことが起こる。 「ダメ!」 私の叫びよりも早く、ミナミは男の子に声をかけていた。
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