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「……えーっと、何かな。君はデリカシーという言葉を知らないのかな?」
「あっ、だっ、だから悪いって…」
「あーあ。お友達、すごい顔してるけど?」
「そんなん今はどーでも良いから!
結局お前は誰なんだってば」
彼女はからかい終わったような無邪気な笑顔で
指摘する
「女子に対して『お前』なんて言う人に教えたくないですよーっ、と」
「あっ、おい!」
軽やかな足どりで机の間を抜けて扉付近に立った
「今度会う時はもーちょっとマナーを嗜んできてくださいね」
「山崎大翔くん」
消え入りそうな声音で言い残していった__
なんであいつが知ってんだよ、、
そう、おれは山崎大翔
高校1年生
勉強もそれなり、友人もそれなり、趣味や得意なものも特になし
至って平凡な男子学生で、あのミステリアス女とは
180°違う存在だ
□□□□□□□□□□□
「皆さん、はじめまして」
とてもよく透き通った声だと思った
まるで色白い肌に反響しているようだった__
「白羽霖音といいます。実は中学生の頃はずっと入院していたのですが、今日から皆さんの仲間として通えることになりました。
1週間遅れですが、これからよろしくお願いします」
模範的な挨拶だった
あれか、こいつ絶対推薦入試で受かっただろ
道理で口が達者なはずだ
「えっと、じゃああそこの席でお願いしますね」
担任の女が告げた席は俺の隣___
なんてことはなく、窓際の俺の席とは微妙な距離感のある席だった
彼女は物静かな足どりで席に向かい、
一つ一つ丁寧な所作で軽い身支度をしていた
キーン…コーン……
少し音質の悪い鐘の音が聞こえる
これはホームルームの終わりを示していた
「はい、では皆さん白羽さんと仲良くするように
それから、1限目は移動なので気をつけてくださいね。あ、山崎くん、今日は号令なしで」
教師お得意のまくし立て
さて、このあと俺があの少女と何があったのか
言うまでもあるまい___
____何も無かったのだ
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