2647人が本棚に入れています
本棚に追加
/396ページ
(来世もどこへ産まれようが、絶対やっぱりモブな未来しか考えられない! ……いやさ、モブでもいいんだけどね。家族や友達、恋人に恵まれる幸せな人生なら、チート持たない人生で全然いいし)
しびれ気味の足を崩し、い草の良い香りがする畳へ寝転ぶ。
その途端、和風キャビネットらしき物の上に置いてあった電話が、ジリリリン! とけたたましく鳴り出した。
「は、はい! もしもし、弓岡ですが!」
電話が鳴ったらツーコール以内で出るよう、ブラック企業で厳しく仕込まれていた俺は、足をもつれさせつつも慌てて飛び起き、受話器をとる。
『あっ、弓岡さん? 俺っス! お部屋までご案内したチカっス!』
電話をかけてきたのはチカ君だった。
「あぁ、はい。先ほどは部屋まで案内していただき、ありがとうごさいました。――あのそれで、どういったご用件のお電話でしょう?」
黒電話よりも更に古い、昭和以前に使われていたのでは? と思わせるアンティーク電話の受話器は、スマートフォンやプラスチックの物を使い慣れた俺には、かなり重く感じられる。
『いやー、スイマセン! オレ、弓岡さんに伝え忘れてたことがありまして』
「何をでしょうか?」
『明日の転生先見学についてっス。見学希望者は明日の午前十時、一階にある「桜の間」に集まって下さい、と言ってなかったなー……と』
「はいはい、なるほど。明日午前十時に、一階の『桜の間』に集合ですね。承りました」
『そっから見学希望先ごとに別れて、十人から二十人くらいのグループになってもらって、見学してもらうようになるっス。引率者もグループごとにつくんで、安心してもらってオッケーなんで』
「分かりました」
『弓岡さんがつけてる多機能時計に、当日お知らせメッセージも入りますけど、遅れないで下さいね!』
チカ君は重ねて、『遅刻厳禁っスよ!』と俺に念押ししてから、電話を切った。
最初のコメントを投稿しよう!