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アラームは突然に
翌朝八時、腕時計モドキがピピピ! と高い音で鳴り、俺はそれによって目が覚めた。
『転生先見学希望者は、午前十時に一階にある桜の間へ集合して下さい』
小型スマートフォンのような黒い画面に、この文章が表示されており、指で二回タッチすると消えた。
目をこすり、顎が外れそうなほど大きなあくびをし、昨夜のワタツミさんとのことを思い出し、気まずい気持ちになる。
(……二度寝するか、飯食いに部屋を出るか、どっちにしようか? 設備は充実してるけど、ルームサービスはないぽいからなぁ)
恥ずかしすぎた手コキの件を払い落とすように強く頭をふり、現世で縁のなかったフレンチレストランへ行くことを決め、布団から起き上がる。
(ワタツミさんに会いませんように!)
この願いは叶い、ふわとろオムレツとクロワッサンを食べた前後に、彼と出会うことはなかった。
朝食後、集合までにはまだ時間に余裕があったので部屋に戻れば、既に布団は片付けられており、座卓が部屋中央に戻されていた。
見学先は魔法がある世界と決めていたので、残り時間の間に特にやることも思いつかず、そのため俺は座布団を枕にして二度寝を決め込んだ。
(うわっ、やっべ! 寝すぎた!)
再び腕時計モドキからの電子音により起こされた俺は、『転生先見学希望者集合時間まで、あと十五分です』と、ディスプレイに表示された文字を目にして飛び起きた。
急いでナビを起動させて部屋を飛び出し、『桜の間』まで早足で向かう。
(良かった! 間に合った!)
十分弱でたどり着いた『桜の間』は、まだ十時がきていないのに既に解放されており、とても広い部屋の内部はたくさんの人であふれていた。
集まっている人の数は、俺の高校時代の全校生徒数より断然多いと思う。
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