アラームは突然に

1/11
2647人が本棚に入れています
本棚に追加
/396ページ

アラームは突然に

 翌朝八時、腕時計モドキがピピピ! と高い音で鳴り、俺はそれによって目が覚めた。   『転生先見学希望者は、午前十時に一階にある桜の間へ集合して下さい』    小型スマートフォンのような黒い画面に、この文章が表示されており、指で二回タッチすると消えた。  目をこすり、(あご)が外れそうなほど大きなあくびをし、昨夜のワタツミさんとのことを思い出し、気まずい気持ちになる。   (……二度寝するか、飯食いに部屋を出るか、どっちにしようか? 設備は充実してるけど、ルームサービスはないぽいからなぁ)    恥ずかしすぎた手コキの件を払い落とすように強く頭をふり、現世で縁のなかったフレンチレストランへ行くことを決め、布団から起き上がる。   (ワタツミさんに会いませんように!)    この願いは叶い、ふわとろオムレツとクロワッサンを食べた前後に、彼と出会うことはなかった。  朝食後、集合までにはまだ時間に余裕があったので部屋に戻れば、既に布団は片付けられており、座卓が部屋中央に戻されていた。  見学先は魔法がある世界と決めていたので、残り時間の間に特にやることも思いつかず、そのため俺は座布団を枕にして二度寝を決め込んだ。   (うわっ、やっべ! 寝すぎた!)    再び腕時計モドキからの電子音により起こされた俺は、『転生先見学希望者集合時間まで、あと十五分です』と、ディスプレイに表示された文字を目にして飛び起きた。  急いでナビを起動させて部屋を飛び出し、『桜の間』まで早足で向かう。   (良かった! 間に合った!)    十分弱でたどり着いた『桜の間』は、まだ十時がきていないのに既に解放されており、とても広い部屋の内部はたくさんの人であふれていた。  集まっている人の数は、俺の高校時代の全校生徒数より断然多いと思う。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!