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「暗くて、線香花火の束がうまくほどけなかったんですよ。ほらほら、いっぱいありますよ」
可憐ちゃん、何だか子供みたいだなぁ。
花火大会の会場から遠くの河原で、2人で線香花火。
彼女はこういう趣向が好きなのだろうか。
2人、向かい合ってしゃがみ、ライターで火をつける。
「私、小さい頃は泣き虫で、いつもいじめられては、泣いて帰って、お母さんに叱られていました。花火大会の夜、子供たちが集まって、そこでもやっぱりいじめられて、花火なんて全然面白くないっていじけていました。そのとき、私より少しだけ年上でしょうか、1人のお姉さんが現れたんです」
線香花火はじりじりと音を立てて丸くなり、やがて火花を咲かせ始める。
可憐ちゃんの思い出話は続いた。
「お姉さんはいじめっ子たちを叱り飛ばして、私と一緒に花火で遊んでくれました。そのときから、私、花火が大好きなんです」
火花を反射して、可憐ちゃんの瞳に炎が灯っていた。
「お姉さんは、言いました。『いじめられたら、私がいつでも助けてあげる』と。あのお姉さんは、今頃どんな女性になっているでしょうか」
私は黙って、炎を見つめ続ける。
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