守る剣

4/8
前へ
/9ページ
次へ
「おじいちゃん逃がしちゃって良かったの?」  離れていく男の後ろ姿を眺める少年。  男の背中は徐々に闇に埋もれていく。  少年は、ふと気付き空を見上げる。  今まさに白く輝く満月の月を黒い雲が覆い隠そうとしていた。  視線を再度男に向けると完全に姿が消え、気が付くと辺りは闇に沈む。  浮かびあがるのは、遠くで光る大通りの街灯、ブロック塀越しにもれる家々の明かり。  どれも路地を明るく照らすには不十分だ。  闇の中、不意に老人に頭を撫でられる。 「おじいちゃん?」 「刀真、壁に張り付いて良い子にしていなさい」  そう言ってそっと少年の肩を押した。  間もなくして、聞こえてくる駆ける足音。  老人は脇差しを足音のする方へと緩やかに構えた。  静寂に響く足音。  かなり近い。  急に月が隠れたため目が慣れないのは相手とて同じ筈。  この場合、迂闊に攻めず微光を放つ自分の刀で相手を釣り、相手の刀の出所を狙う。  脇差しを前に意識を集中させる。  暗闇に浮かぶ一本の脇差し。  おかしい。  何時からか、足音が途絶えている事に気付く。  相手はどこに?
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加