守る剣

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静寂の闇の中、五感を研ぎ澄ましていく。  微かな光で出来る影。  梅の花の臭いに混ざる血の臭い。  変わる空気の味。  肌に掛かる相手の体温。  微かな風の音……右から。  刹那、闇から生まれた一筋の光。  流れる様に受け流す波打つ光。  どうやら辻斬りは身体に刀身を隠し、間合いまで忍び寄り一撃を放ったのだろう。  老人はそれに瞬時に反応した。  息つく間もなく老人は滑る様に切り返そうとする。  十字に重なる弓形の光。  冷たく響く摩擦音。  しかし、易々とはとらせてもらえない。  老人の身体ごと祓い除ける様に、相手の光は大きく弧を描く。  一旦離れる、流れる様な二つの光。  辻斬りの刀を良く見てみる、刀身を伝う光が先の方に差し掛かった所で透明感のある赤い光に変わった。  血か……  逃げる訳にはいかない。  老人はそう思うと緩やかに構えた。  辻斬りもまた真っ直ぐ剣先を突き付け構える。
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