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カルマと迦楼羅(かるら)
薄暗い山道を、転がるように小春は駆ける。
早く。
早く、あれから逃げなきゃ。
昼間だというのに。
杉林は夜を抱いたままの冷たさで、小春に覆い被さってくる。
あれは一体、何なのだろう? 見馴れた鳥とも、けものとも違う。
あんなに奇妙なモノ、今まで一度だって見たことない。
人里離れた場所は、ひとの世ではないと聞くけれど――。
「きゃっ」
足をすべらせ、転倒した。
ぽおんと、脱げた草履が宙を舞う。
顔をあげ振り返る。
立ち込めたもやのせいで、見通しがきかない。
いた! 真っ暗な林の中を、闇がはっている・・・・・・こっちにくる!
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