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その影が消えることはない。
むしろはっきりと姿を現している。
白日のもと、それを斬った姿勢のまま刀を構え立っていた。
紺色の裁付袴と、赤い籠手を身に着けた誰か――とりあえず、ひとのかたちをしている。
一番上に着た鎧は、目の醒めるような緋。
その胴には、真ん中に大きな金色の円がひとつ、描かれている。
「もう大丈夫です。あれはいなくなりましたから」
精悍な表情がほころぶと、柔和な顔立ちだと分かった。
青年、というにはまだ幼いような。
刀を納めた若者を見上げたまま、ようやく出たのは一言だけ。
「あなたは・・・・・・」
はい、と礼儀正しくうなずき、相手が答えた。
「治道のカルマと申します」
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