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「おい、やめとけって」
いつも持参している消毒シートで僕が机を念入りに拭いていると、同じ大学の友人である日向晃が小声で忠告してきた。
「なんで? もういい加減慣れただろ?」
「俺はな。でも見られてるから」
そう言われて視線を日向の見ている先へ移すと、確かに女子数名がこちらを見てヒソヒソと何かを話しているのが見えた。
「別にいいよ」
僕はそんな事は気にせず、今度は椅子を机同様に丁寧に拭きあげる。
それから新しいシートを一枚取って、自分の両手を拭いて、これまた持参している密封できるフリーザーパックへ使用済みのシートを入れた。
「よし。これで座れる」
「別に教室の机なんて大して汚れてないだろ」
「何言ってんだよ。不特定多数の人間が使うんだから、ばい菌だらけだろが」
僕が言い返すと、日向は諦めたようにしてため息を吐き、僕の隣へ腰を下ろした。
「全く、加瀬の潔癖には驚くよ。そんなんじゃ彼女出来ないぞ」
「別に要らないし」
「まさかその顔で今まで誰とも付き合ったことがないなんて言わないよな」
僕は日向を一瞥すると、すぐに鞄からテキストを取り出す作業に移った。
「え、マジで?」
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