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半分に12.涙
自分は滅多な事では泣きはしない。
もう良い大人なので、淡々と日々のトラブルや不都合に向かうだけ。
母を亡くしてからまともに泣いた記憶がない。
お見舞いの日、最期の日、そして見送った日は大泣きしたのだが。
良い大人なのに気持ちを制御できなかった。
もしかすると一生分泣いてしまったかもしれない。
だが時々、不意に涙が頬を伝う。
悲しいわけじゃない。
それでも涙は止めどなく流れて、主人の意思に反して流れ続ける。
目の酷使が原因か。
ドライアイが原因かと、人によっては言うだろう。
でも自分にはそうと思えず、
涙が「僕の事を忘れないで」と主張しているように感じてしまう。
次に泣くときは、案外自分を葬る時かもしれない。
己の最期に涙が出張ったなら大変だ。
まるで後悔しながらの退場にしか見えないじゃないか。
最期は笑って死なせて欲しい。
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