平易文4.隔離

1/1
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ

平易文4.隔離

体が病に冒されることと 心が病に侵されることに 大きな違いはない。 閉めきった部屋に一人籠り、外敵と戦うしかない。 病に冒された体は菌をばらまく。 寄る人寄る人全てに類を及ぼす。 だから接触してはならない。 そして孤独を枕に、立ち向かわなくてはならない。 病に侵された心は悪意をばら蒔く。 眼に映るもの全てを憎み、恨み、深く憎悪する。 だから接触してはならない。 自分と無関係な物事に思考を向け、めくれ返った心のヒダが戻ることを待つしかない。 病の癒える前にどうして人前に姿を晒せようか。 体が負ければ朽ち果てる。 心の負ければ立ち消える。 そうならない為にも、己を信じて、ジッと堪えるしかないのだ。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!