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出会い
「なんというか、容赦がないというか。トキ様の性格の悪い所が出てるな」
習うより慣れろ、教わるだけではなく体験しろ。
それが実学というものを重視するトキの口癖だ。
ヒノエは吐息を零しながら、一定の歩調を保ちながら山道を登る。
「寒い……な」
装束の袖の中に手を潜め、微かに吐息を吹きかける。
人が住まう町とは違い山中の冷え込みは厳しかった。
山の中はヒノエ達が住まう場所よりもずっと冬の気配が濃くなっていた。
周囲の果樹は色付き、冬支度に追われる獣たちの気配もある。そして足元には色とりどりの木の葉の絨毯が敷き詰められている。足が地面と触れるたび、カシャカシャと落ち葉が音色を奏でた。
「確かに、御山の様子は少し変だけど……ここまで異形らを刺激するなんておかしいな。ボクだって異形と争いたいわけじゃないのに」
先程から視界の端々には雑鬼らが跳ね、上下左右から剥き出しになった敵意が突き刺さる。理由のない敵意に困惑と、多少の苛立ちを感じながらもヒノエは周囲に問いかけるように呟く。
「……無駄な争いはしたくない。お前達もその筈だろう?」
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