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けれど、そんな願いとは裏腹に――。
霊域である山の気配は重く、次第に不穏な空気が伝わってくる。早めに目的地の祠へ向かおうと呼吸を整えた刹那、
「ギャウゥ……!」
近くの茂みから鋭い声を響かせ、数匹の異端鬼が飛びかかってきた。
「神帝有勅 神硯四方 金木水火土 雷風光電神勅 軽磨霹靂電光転 急々如律令 ――光華招雷!」
鋭い声とともに、ヒノエは剣印を振り下ろす。
直後、稲光が周囲を白く染め上げ、同時に今まで感じていた異常な空気は瞬く間に霧散していった。
「錯乱した異形を調伏するのも滅入るな。まさかここまで山がおかしくなっているなんて」
一人ぼやきながらも、ヒノエは懐にある札を密かに握りしめる。
「多種の異形をも喰らう〝異種喰い〟と称される異形なら尚更だ。この任務、絶対に成功させてみせる」
多種多様な異形を喰らっては力を増すという特異な異端鬼。そんなモノが低級であれど雑鬼も住まう街に降りたら、どれだけの被害になるだろう。
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