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「まあ、そうだよなぁ…」
「しょうがないよ。最近は外から稼ぎに来る人も多いし」
トボトボと出口に向かうと、食堂の何人かが僕らの後ろ姿に視線を向けてきた。彼らはつまらなそうに視線をずらすと、何事もなかったかのように気を静めた。
「嫌な雰囲気だったな」
『自分以外、全部敵って、感じ』
アックスギルドの門を通り抜けようとすると、赤い光が視界の隅に映った。
振り返ると、光っていたのは植え込みの隅に転がっている石ころだった。
『何だろう、これ?』
レオは「ん?」と言いながら、僕が指さした石を眺めた。
「ただの石ころじゃね?」
この赤い光。レオには見えないのか。
何やら怪しげなものだから触らないほうがいいだろう。シリーもまた石をじっと眺めると、ヒクヒクと鼻を動かした。
「うっすらとだけど…ヒュムフの女の人のにおいがするな」
女性のにおいのついた赤く光る石。これをどう考えるべきだろう。
レオはニヤッと笑った。
「泥棒猫でも追いかけて、石でも投げたのかね?」
「素手で掴んだら、もっとべったりとにおいが付くよ。
これはにおいがつかないように、何かに包んでおいたんじゃないかな?」
僕らは首を傾げながら通り過ぎようとしたが、急に声をかけられた。
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