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待つことおよそ30分、神父がシリーにパンを差し出した。
彼は十字をきってパンを受け取る。続いてレオ、最後に僕だ。
パンを手に取ると、シチューの熱が伝ってきた。レオやシリーを見ると、顔をほころばせている。
「いっただっきま~す」
蓋をスプーン代わりに中のシチューを掬った。そのまま口に運ぶと、ミルクの風味と、ジャガイモや肉の香りが口の中で広がる。寒空の下とはいえ、タダでこの味に出会えるのは何とも贅沢だ。
シチューの量が減ったところで、今度は器代わりのパンを少し千切って食べてみた。日本のパンとは違い、生地自体がとても厚い。その分厚い生地がシチューの水気を吸っており、しっかりと胃に溜まっていく。
しばらく食べ進めたところで、スプーン代わりのパンの上蓋も食べてみた。こちらはまんべんなくシチューを吸っており、更に美味だ。
レオに目をやると、にっこりと笑いながら口の周りを舐めていた。美食家の彼もすっかり満足した様子だ。
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