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純粋な芽の伸ばし方
物陰で色濃く咲く嬌声。それを摘もうとする男を壁際でひっそり、複雑そうに見つめる少女。
「隼人っ、いい…、」
「…、」
「ねえ、寂しいわ…。
ちゃんと、名前…、呼んでぇ…?」
「…雫、」
ぐちゅり、絡み合う音が漏れ響きそうな接吻。
暗闇の中で伸びる、青色の視線。気付いて欲しくて、芽を咲かそうと必死に――当然、二人がそれに気付く筈がなく。
「っ、」
急激な嘔気が少女を襲う。今にも吐き出してしまいそうなものを、抑えて、抑えて――駆け出して、逃げ出して…誰もいない部屋に独り。戻って来てしまうのだ。
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