5人が本棚に入れています
本棚に追加
「うぇっ…、っ――」
吐き出したいのは、こんな汚いものじゃない。
純粋な、穢れのない感情なのに。
それを伝える術を知らない少女は独り、部屋で涙を流す事しか出来ず。
枕が湿っていく。最初は温いのに、そんな温度は一瞬で喪失して、冷たいものに。
素直って何でしょう? 「痛い」、「嫌だ」、「止めて」、「苦しい」…正直な言葉を吐けば吐く程、千里様は怒った。と、少女の思考は闇ばかりが蔓を伸ばし、絡み付いて、縛って、花を咲かせられない。
水分は溢れ出て、いつかは枯れて、干からびてしまうのだろうか。
そう心配せざるを得ない少女の涙と孤独感。
枕が涙池に沈んだ頃、少女は無意識の闇に落ちた。
そうして三十分足らず、部屋の扉が静かに開かれる。
無遠慮にぼん、と、ベッドが軋んだ。
すると、少女が「ん、」と、無意識の中で表情を咲かす。
「…………」
いつからだろう? それが、彼にとって孤独を解消してくれる絶対的な存在になっていたのは。
伸ばした手に絡んでくる髪の感触が、指を通して伝わる体温が、愛おしい。
最初のコメントを投稿しよう!