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千寿丸は濃いまつげを伏せ、初めの動揺を押し殺した。
さすが、東宮御所で働いているだけある。
大人びた表情はすでに人生のイロハを知り尽くしている。
そんな顔をしているのだ。
「お姉様。それと……小袖の神さまでよろしいのでしょうか」
丁寧な言葉遣いに、神さまはすっかり気を良くしたようだ。
「ほう。この稚児はなかなか良い顔相をしておる。末は博士か大臣か…のう?」
「滅相もございません。お姉様のようにお母上が堂上家のご出自のお方とは身分が違います。今東宮様にお目をかけていただいているとはいえ、それも父である大納言殿のご威光あってのことでございます」
模範的回答過ぎて、居心地が悪い。どこから突っついてもぼろが出ない性格というのは、付き合いにくいのだと万結姫は思った。
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