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5.やんごとなきかたにも恋煩い
今東宮様といえば、最近、噂になっていた。
古い恋仲だった女官が、心変わりをしたとかで塞ぎ込んでおられるという。
当代きっての美男子で東宮様といえば次の天皇様なのだ。
恋人不在となれば、他の女官の方が放ってはおくまい。
「そうか、では今東宮に会ってみようかのう」
袖口から体を乗り出した神さまは、万結姫の腕にちょこんと座った。
まるで良く慣れた小鳥のようだ。
「本当でございますか。では早速お取り次ぎをいたします……」
千寿丸は嬉しそうにぱっと駆けだしていった。
「ちょっと待ってよっ。わたしの縁組みはどうなってるのよっ」
万結姫の顔をちらりと見ると、神さまはううむと考え込んだ。
「ま、何にせよ本人に会ってみれば方策も見つかるであろう」
小さい神さまのくせに。もっともな事を言う。
それにしても、恋仲の女官が心変わりをしたからといって、今をときめく東宮様が恋煩いとは。奇妙な話もあるものだ。
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