7.最強侍女登場

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7.最強侍女登場

「千寿丸。東宮様に薬湯をもって参れ」 「はっ、ただいま!」 さすが筆頭女房。眉ひとつ動かさずに、千寿丸に言いつけると、のっしのっしと歩いて東宮様のお顔を覗き込んだ。 小山のような背中に隠れて、小さい神さまの姿は全く見えない。 おそらくあちらからも、万結姫の姿は見えないことだろう。 「はて。何やら小さきお姿が見ゆるのう」 志津の声は、姿とは違って澄みきっていて麗しく、後で聞いていた万結姫はぽかんと口を明けたまま背中を見ていた。 声美人。 まさしく志津の事だ。 源氏物語でも、御伽草子でも、男女の恋愛は互いの姿を見てしまったときにはもう遅い。 声や、文字、香の趣味。そんな情報から相手を判断して、これはと思ったら恋に落ちるのだ。 明るい時間まで共に過ごさないのは、男女とも都合がいい習慣なのだ。 この、志津の声を聞いたら、絶世の美女を想像する。間違いない。 まさかこんな、巨体の女房が現れるとは思っても見ないだろう。 だが、人にはなにか一つは取り柄があるものだ。それを最大限に生かせば道は切り開ける。 万結姫は、そんなことを瞬時に考えた訳だが、それよりも小さい神さまが心配になってきた。
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