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2.小さい神さま。ヘンテコです
これ以上ヘンテコな小人に付き合うのはごめんだ。
万結姫は素早く立ち上がると小人に、礼儀だと思って頭を下げた。
「ごきげんよう、森の小人さん」
その言い方が気にくわなかったらしく、小人は背を向けようとしていた万結姫の袿の端を掴んだ。
「こりゃ。またぬか……わしは八百万の神の端に連なっておるのじゃぞ。訂正せよ」
面倒くさい小人……もとい神様に遭遇してしまった。
神様への信仰など、今日のお餅が上手に焼けるかくらいの感覚であって、すがるほどのものではない。
だが、袿を掴んでいる手を引き離すのは簡単では無さそうだ。
「分りました。では八百万の神の端に連なる神様。くしゃみを止めてくださってありがとう。ではごきげんよう」
精一杯、顔に笑顔を貼り付けて、ありったけの愛想を放出して、ようやっと小さな神さまは満足したようだった。
「ではあたくしは寺に戻らねば母上が心配しておりまするゆえ……」
だっと走り出そうとした時。
沢の上流から青いウロコを光らせた大きな蛇が、かっと口を開いて突進してきた。
まっすぐに狙い定め、小人の神さまに襲いかかった。
「小さい神さまっ危ないっ」
万結姫は咄嗟に小袖の中から、虫除けの香袋を出して蛇に投げつけた。
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