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3.怖いに決まってるでしょうっ
「泣いておるのか?蛇が怖かったのか?」
「ええそうよっ。大納言家の総領娘なんだからね……蛇を撃退したなんて恥ずかしくってひとにも自慢できないわっ」
沢から寺の庭に上がってくると、宿坊の辺りが人が集まり賑やかだった。
次の寺参りの一行が到着した様子だ。
公達は派手な狩衣の下に、さらに朱色と柳色を重ねた最新流行の下着を着て、烏帽子も黒々と立派だ。
女房達は薄い藤色にやはり朱色を重ねる、鮮やかな五つ衣でめかし込んでいた。
八女笠を廊下に並べていた女童姿の小間使いが、うっかり御簾をあげてしまっている。その隙間から、すらりと立つ青年の姿がくっきりと万結姫の心に打ち込まれた。
「わたし……あの人と結婚する」
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