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私が左籠手の手の甲に刻まれた、濃蒼の花を模った紋章を見せる。
「このクソアマッ!!」
そこまで黙って聞いた団長は口汚い言葉を発して、私に剣で斬りかかってきた。
破れかぶれ。部下達と大して変わらない技量の、早さも工夫も無い斬撃。
だが、剣はその切れ味を披露する事も、風切り音すら発することは無かった。
男の手首は振り下ろす寸前で、私に掴まれていたから。
徐々に手首を持つ左手に力を込め、男の腕を捻り上げていく。
「ああぁあぁあっっ……」
情けない声を漏らし、手から剣が零れ落ちる。からんという音を立て剣は廃墟の床を転がった。
「誘拐した子をどうするつもりでした?」
「た、高く買い取ってくれる奴らがいて、そいつらに売り渡してんだよっ」
「そいつらは何者ですか?」
「し、知らねぇ!知ってたとしても話せねぇ」
男は右腕を捻られる激痛に耐えながらも、知らないと言い張る。
「なぜですか?」
分かりやすいよう、短く質問する。
「こ、このことを話したやつは、皆その組織の暗殺者に殺されてるって話だ!」
口封じ、か。
「そうですか。まあ構いません。我々への依頼はあくまで誘拐された子を探すことと、誘拐犯を捕まえることです。その先まで調べるのは警備隊の仕事でしょう」
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