第2章  春に眠る命のかたまり

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 親父は、仕事の都合で来れない事が多く、顔を見せたいのに見せることができないと嘆いていた。  やはり、この特別棟だけは人通りが少なく、静かすぎる。  三階に上がるまでにすれ違ったのは、いつも会う看護師さんと外科・内科医の先生ばかりだ。 「あら、(かける)君。今日も羽咲さんのお見舞い? この三ヶ月毎日のように通っているわね。彼女の事が心配なのはわかるけど、体には気を付けてね」  と、すれ違った綺麗な看護師さんは桜の担当である富岡美羽(とみおかみう)さんだ。  歳は、暦姉と同じ二十代後半であり、長い髪を左右に小さく三つ編みに纏め、後ろを腰の位置まですらっと伸ばしている。体のラインがはっきりとしており、出る所は出ている優しいお姉さんだ。
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