第2章  春に眠る命のかたまり

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 羽咲桜(はねさきさくら)が交通事故に()い、昏睡状態になってから三か月後――――  時は四月。  桜の花が満開になるこの暖かな時期、俺は高校一年生から高校二年生になっていた。  暖かな風に吹かれて、高校は今現在、春休み期間入っている最中である。  俺は朝、目覚まし時計の大きな音で目を覚ますと、ベットから飛び降りて、顔を洗い、台所に行くと、昨日買っておいたコンビニ弁当を食べ、歯を磨き、外に出かける準備をした。  あの日以来、俺は毎日のように病院に通っている。一度も目を覚まさなくなった桜の見舞いのためだ。家から病院までの距離は自転車で約二十分。私服に着替えると、エコバックに桜の着替えや果物、財布などを入れて太陽が南の空に差し掛かる時間帯にゆっくりとペダルを漕ぎながら、過ぎていく景色を楽しむ。  俺はこの三ヶ月間、彼女の事が頭から離れたことは一度もなかった。眠り続ける彼女を俺は病室の隅っこの窓から太陽の光が当たるところに座り、いつ目を覚ますのか待ち続けていた。
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