第1章 主催者

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直後、玄関のドアが開き父が帰ってきた。 仕事から帰り父が見たのは息子の部屋の前で泣いている妻と母の泣き声を無視し続ける息子の図だったのだと思う。父は激怒しすぐさま僕の部屋へと足を踏み入れた、ドアノブを握ったままフリーズしていた僕とドアを勢いよく開けた父とはドアの前で立ち合うことになった。僕の顔を見た直後、父は硬い拳で僕を殴った。 母はそんな父をなだめようと必死になって父を抑えようとしていた「この子は私に何もしてないの、本当に。」そう言って僕を何回も何回も庇っている母は本当に僕を心配していたんだと思う。 「そいつはお前に何もしてないって本気で言えるのか、毎日お前や学校の人達の優しさを否定し続けて。しまいには自分の母親が泣いてるのに無視を決め込む。」 僕を庇う母に父は泣きそうな顔でそう言った、母も1度何かを言いかけたが直ぐに口を閉じ黙ってしまった。僕はうつむいたまま鼻から垂れている血が床にポトポトと音を立てて落ちるのを見ていることしか出来なかった。 その後、父は直ぐに僕の部屋から出ていった。母も僕に「鼻血が酷いから鼻にティシュ詰めてしばらく下を向いててね。」と言い残しすぐに出て行った、夜には父と母が喧嘩してる声が聞こえた。 2人が部屋から出ていった後は母の言う通り鼻にティシュを詰めてずっとうつむいていた、1時間近くうつむいていて体勢がキツくなってきたのでその場で横になった、すると少し前に冗談半分で自殺でもしようと父の倉庫から盗んだロープがベットの下にホコリをかぶって転がっていた。見た時にコレだと思った、コレしか今の僕に残された道は無いんだと確信した。 道を切り開いた朝はとても気持ちよかった朝は5時に目が覚めたので久しぶりに部屋の窓のカーテンを開けた、何回も見たことがあるはずの日の出が異様に綺麗に感じた。 直ぐに制服に着替え、歯を磨き、顔を洗った。そして、何ヶ月ぶりかわからない母の朝食を家族で食べた。玄関の前にはホコリをかぶっていると思っていた通学用の靴が汚れ1つホコリひとつない状態で並べてあった、母が毎日いつでも学校へ行けるように靴を磨いていたのだと知り泣き崩れそうになりながら母に「行ってきます。」と言った、「行ってらっしゃい」と言う声が母の優しく落ち着いた声と父の低く威圧感のある声とで二人分聞こえた。
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