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「暗いのによく気づいたな」
「まぁな」
「なんでわかったんだ?」
「だから、たまたまだよ」
「たまたまって……」
「もういいだろ。しつこいぜ」
「……わかったよ。けど、さすがに鍵かかってんじゃね? 割ってまでは入りたくねぇからな」
「開いてるといいな」
ワタルが窓に手をかけた。
ガラ……。
それはなんの抵抗もなく開いた。
俺は霊感とか一切ない。けど、妙に不安だった。なんとなく嫌な予感がした。
「じゃ、行くぜ?」
「あ……」
ワタルはなんの躊躇もなく潜り込むように入っていった。
俺は喉まで「お前ひとりで行けよ。俺は駐車場で待ってるから」と言う言葉が出かかっていた。けれど、結局言わなかった。あとから馬鹿にされるのが嫌だったからだ。
俺はクッと唇を噛んだ。
平気だ。どうせ何もないさ。ワタルが納得するまで一通り探索して帰ればいい。……大丈夫だ。
足を踏み出すと窓へ手をかけた。
その時、遠くから何か聞こえた気がした。俺は顔を上げた。来た道の方向を見つめる。
「…………」
真っ暗な空間が広がる景色。木々の擦れる音。虫の音。それらに混じって何かが叫んでいるような声が聞こえる。
ーーォ……。
風か? それともーー。
「直樹。早く来いよ」
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