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何か見えねぇかな。
ジッと食い入るように窓を見つめた。動きのない真っ黒な景色。窓の奥には深い闇が広がっている。なにも変化は見られなかった。
ワタルがさっき言っていたことを思い出した。
三階の窓に幽霊がいたのを見た奴がいる、と。
どの窓かはわからないが、俺には何も見えない。
見るも何も、照度が低すぎる。
こんなに暗かったら仮に幽霊がいたとしても気づかないんじゃないか。
そう考えた時、無性に可笑しくなって思わず笑った。
馬鹿馬鹿しい。ワタルが戻ってきて適当に散策したらさっさと帰ろう。
目を伏せると息を吐いた。
その時だった。
ーーガサ。
草むらから音がした。ドキッとして瞬時にライトを向ける。
右後方。
その暗闇の中で雑草が不自然的に揺れているのがわかった。
けれど、よく見えない。
ユラユラと揺れている葉。
その奥に潜む影。
何かがいるのか?
ワタルのいる方向ではない。
ドクンドクン。心臓が強く打ち付ける。
いる……なにか、いる。
ゴクリと息をのみ、一歩踏み出した。
瞬間、草の中から黒い影が前方へ飛び出してきた。
「うわ」
一歩後ずさりしながら、震える手で必死に照らした。
黒い影の正体。
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